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>>next (やった、ついに……ついに成功したんだわ!) 使い魔を呼び出す「サモン・サーヴァント」の儀式……いつものように「ゼロのルイズ」とクラスメイトたちに囃し立てられる中、 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは杖を振った。 お約束の爆発と白煙に、湧き上がるクラスメイトたちの嘲笑。 しかし、もうもうたる白煙が次第に薄れると、笑いはさあっと波が引くように静まっていった。 煙の中から姿を現したのは、およそ2メイルにも達する巨大な金色の幻獣であった。 「まさか、成功したのか!?」 「ゼロのルイズがあんな幻獣を……」 クラスメイトのざわめきを、ルイズはこのうえなく心地よく受け止めていた。 (私だって、私だってやれば出来るのよ。これだけの幻獣を召喚できるメイジなんて、そうはいないわ!) 「ほう、これはお見事ですな、ミス・ヴァリエール! さあ、『コントラクト・サーヴァント』を済ませるのですぞ」 コルベール師がにこにこと相好を崩した。 劣等生で手のかかるルイズが見事に「サモン・サーヴァント」を成功させたことは、人のよいコルベールには大きな喜びだった。 「はい、コルベール先生」 ルイズは、すう、と息を吸うと、召喚した幻獣に向かって歩み寄る。 目の前にうずくまる使い魔は、見るほどに見事な幻獣だった。黄金に輝く体毛、力強い四肢に鋭い爪。そして、こちらをじっと射抜く視線―― この幻獣を自分が召喚したのだ、という喜びに、ルイズの胸が震える。 「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」 杖を幻獣の額に置こうとした瞬間だった。 「人間か……」 幻獣が、ニヤリと口を開く。口の中には獰猛な牙がずらりと並んでいるのが見えた。 (――ししし、しゃべったー!?) ルイズの目が驚愕に開かれた。人語を解する幻獣が居ないわけではない。例えば韻竜は先住魔法や人語を操るという。 しかし、実際に幻獣がしゃべるのを見るのは初めてであり――ルイズはペタンとその場でしりもちをついた。主人の威厳台無しである。 「あああんた、しゃ、しゃべれるのね。なな名前は?」 それでもルイズは、震える声で精一杯威厳を取り繕って幻獣の名前を聞く。 「やれやれ…相変わらず人間はやかましいな。まあ、いい……わしは……長飛丸――いや、ちがうな」 幻獣は、ずい、と身を乗り出し、ルイズの顔を見据えた。 「わしは、とらだ。小娘――覚えときな!」 ルイズは必死の表情で、コクコクと頷いていた……。 「驚きましたな……人語を操るとは。いやはや、わたくしでも見たことがない珍しい幻獣ですぞ! ふむ……サラマンダーでも、ドラゴンでもない。あえて言えばキマイラかスフィンクスでしょうか……」 コルベールが興味深々といった様子で近づいてきた。研究熱心な彼の目は好奇心で輝いている。彼の頭もまた、光を浴びてさんさんと輝いていた。 (コイツ、光覇明宗のボーズか……? まあ、いいやな) 「とら」と名乗った幻獣はルイズに向き直った。 「おい小娘……るいずといったか? 教えな、わしはどうしてここにいる? 冥界の門をくぐったとばっかり思ってたがな」 「コ、ムスッ……コホン、いいわ、おお教えてあげる。アンタは、わわ私が『サモン・サーヴァント』で使い魔として召喚したの! こ、ここれから『コントラクト・サーヴァント』の魔法で契約を結ぶのよ」 びびりながらもルイズは台詞を最後まで言い切った。それにしても、「とら」とは奇妙な名前だった。 いや、人語を解する幻獣だ。どんな名前だろうと不思議ではないのかもしれない。 とらは冷静に目の前に立つ人間を見つめていた。桃色の髪の娘は、西洋風の服を着て手に小さな杖を持っている。 (法具、じゃねえな。錫杖にしちゃ小さすぎる。どうやら、大陸の「魔術」ってやつか……) 妖怪を使い魔として召喚する術者たちのことは、とらにも聞きおぼえがあった。以前戦った「お外堂」たちのようなものだろう。 (ち、さっきからわしが動けねえのは、そのせいかよ……) 使い魔か、と考えてとらは少々うんざりした。できることならさっさと空に飛び出し、思うさまに暴れてみたいところである。 とはいえ、自分は確かに白面との戦いで消滅したはずだ。 状況から考えて、一度消滅した自分をここに召喚したのは、まぎれもなく目の前の小さな娘だった。 「……まあ、暴れたらまたうしおがうっせーだろーしよ……それにオマエには借りが出来たようだな、小娘――」 「ははは、はいっ!」 「さっさと済ましちまいな、その契約とやらを」 そう言って、とらは舌を突き出しながら凶悪に笑った。ルイズは失禁をこらえながら、ギクシャクととらに近づく。 そして、震える手で杖を差し出すと、とらの額にあて、そっと背伸びをしながら、とらにキスをした。 「こ、これで終わりよ。あああと、体のどこかに使い魔のルーンが刻まれるわ」 ルイズの言葉通り、とらの左手が熱を帯び、やがて金色の体毛にルーンが浮かび上がる。……やれやれ、呪印かよ、と呟くとら。 「ほほう、珍しいルーンですな……いや、まったく面白い。とら君、あとでぜひいろいろお話を聞きたいですぞ! 幻獣から直接話を聞ける機会など、そう滅多にありませんからな!」 にこにこと笑うコルベール。しかし、その姿は、どこか不思議な力に満ちていた。ちょうど、法力を放つ直前の法力僧のように―― (そうか、こいつ、うしおのオヤジに似てやがるんだな。普段は笑っているが、こいつ、つええな) とらはニヤリと笑った。強いものが好きな性格だけは死んでも変わるまい。 「……ボーズ、わしはその幻獣てのじゃねえ。バケモンよ。大キレーな呼び方だが、大陸じゃ字伏と呼ばれた妖怪だ」 「おおお! アザフセ、ですか。まったくの新種だ、素晴らしい、とら君! ……ハッ、いかんいかん、忘れておった」 メモを取っていたコルベールは、慌てて生徒たちを見回した。 「皆さん、教室に戻りますぞ」 生徒たちは次々と、「フライ」の魔法で飛んでいった。とらは感心して飛んでいくメイジたちを見ていた。 この連中はなかなか法力――いや、魔力が高いように見える。法力僧でも空を飛ぶような者はそう居なかった。なのに、子供まで―― 「む、小娘――オメーは飛ばんのか?」 一人取り残されたルイズは、ふるふると震えていた。 「飛べないのよ……あああと、あたしの名前はルイズよ。小娘は、やや、やめて」 しゃーねえなあと、とらは頭をかく。そのまま、むんずとルイズの細い腰をひっつかんだ。 「きゃあ、ちょ、なにーっ!?」 「つかまってろ、るいず。飛ぶぞっ!」 日本で長飛丸の異名を持ち、そのおそるべき速さを恐れられた妖怪は、ルイズをつかんだまま風のように飛び上がった。 耳元で風が猛々しくうなりをあげる。 (ああ……ひょっとして、わたし、やばいの、召喚、しちゃった、か…も……) 「ひょおおおおおおおおおっ!!!」 薄れていく意識の中で、ルイズはとらの歓喜の雄叫びがトリステイン魔法学院に鳴り響くのを聞き…… 気を失った。 >>next
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ルイズはある城の地下深くにいた。ルイズの目の前には一人のメイジが玉座に坐っている。 悪魔のような恐ろしいあ人のメイジが・・・ 「よく来たルイズよ。わしが王の中の王、竜王だ。わしは待っておった。そなたのような若者が現れることを・・・。もしわしの味方になれば世界の半分をルイズにやろう。どうじゃ?わしの味方になるか?」 「あ、あの、なんで私はこんな所にいるんでしょうか?」 「何をいまさら。そなたはわしを退治しにこの城までやって来たのではなかろうか」 「あ、あなたのようなメイジを退治なんてとんでもないです!ぜひとも味方にさせてください!でも、ゼロの私に世界の半分なんて荷が重すぎます!」 「ほう、世界の半分は入らぬと申すか。まあ、そなたが望むのならそれもよかろう。ルイズよ。お前の旅は終わった。さあゆっくり休むがよい!わあっはっはっはっ・・・・・」 ルイズの視界は真っ暗になってしまう。数時間後、先ほどのメイジと同じ声がルイズの耳に響いた。 「ルイズ。起きるのだ。ルイズ」 ルイズははっと、夢から目覚めた。そして目の前には先ほどの夢の住人の姿があった。 「ひっ!夢の人!?せっ、世界の半分なんてとんでもないです!」 「何を言っておるのだ?わしはそなたに召喚された使い魔ではないのか?」 -すっかり忘れてた。昨日召喚したんだっけ。確か昨日夜に散歩に行ってたんだっけ。 「た、確かに召喚したわね。ちょうどよかったわ。じゃあ、この服を洗濯しといて頂戴」 「わしが・・・洗濯をか・・・?」 「そうよ!あんたは私の使い魔なんだからそれくらい・・・な、何よ、その目は・・・」 「王のわしにそのようなことをしろというのか・・・!」 竜王の魔獣のような眼光でにらまれたルイズはヒッと足がすくんでしまう。 「愚か者め!思い知るがよい!」 -なんで!?物探しのときは快く引き受けてくれたのに・・・ ルイズと竜王の考え方は違っていた。 物探しの件は、ルイズは使い魔なんだから主人の命令を聞くのは当然と思っていたのに対し、竜王は自分の部下の望みはある程度叶えてやるものだと考えていた。 もちろん部下の衣類の洗濯等は上の者がやるようなことではない。 「な、何よ・・・私はヴァリエール公爵家の人間なのよ・・・あんたみたいのがかなう訳ないじゃない・・・」 口では強がりを言って見せるが、足はガクガクと震え、目からは沢山の涙の粒があふれている。竜王はフッとルイズを嘲笑する。 「何がおかしいのよ!」 「哀れだな、ルイズよ。どうやっても太刀打ちできぬ相手に一生懸命強がりを言って見せる。自分がわしにかなわぬことは自身がよく分かっておるはずじゃ。いくらわしでもこんな間の抜けた相手と戦うのはちと気が引けるのぉ」 「も、もういいわ!洗濯は自分で行ってくる!」 そう言ってルイズは学院を出て広場に向かった。 「あの、ミス、ヴァリエールですよね?」 メイド服に身を包んだ少女が、後ろからルイズに声をかけてきた。 「確かあんたはここのメイドの・・・」 「はい。ここで働かせていただいているシエスタと申します」 「ねえ、シエスタ。あんたも洗濯しに行くんでしょ。私のもやっといてよ」 「そういえば、貴方の召喚した使い魔は人語を解す亜人だとか・・・」 「そうだけど、それがどうしたのよ?」 「誠に申し上げにくいのですが、洗濯なら・・・」 「あー、だめだめ。あいつったらかなり尊大なやつで、とても洗濯なんてさせられるようなやつじゃないのよ。そういうことで、あんたがやっといてよ」 「はあ、分かりました」 亜人の使い魔が来て、洗濯者が少し減ると思っていたがそうでもなかった。しかし、彼女は別に洗濯が嫌いという訳ではなく、気にはしなかった。 ルイズは部屋に戻って、いそいそと着替えを始めた。洗濯をしてくれない者が服を着替えさせてくれるとは到底思えないからだ。 ルイズと竜王は朝食をとるために部屋から出る。 すると、部屋を出たと同時に他のドアも開いた。 中からはルイズと同い年とは思えないほど大きな胸を持った艶やかな褐色色の肌で赤い髪の少女(といえないかもしれない大人っぽい女性)が出てきた。 彼女は竜王の姿を見た途端に顔が引きつってしまった。 「お、おはよう、ルイズ」 「おはよう、キュルケ。どうしたの、顔が引きつってるわよ」 「隣にいる彼が貴方の使い魔なの?」 「そうたけど、とっても尊大で全然使い魔とは成り立たないのよ」 「やっぱり、使い魔は普通は動物や幻獣だからねー。たとえば私のフレイムとか」 キュルケの部屋からは、真っ赤な巨大なトカゲが出てきた。しかし、何かにおびえるように震えている。 「あ、あら?どうしたの?」 「これってサラマンダーでしょ?」 「そうよ、火トカゲよ、召喚される前は暑い火竜山脈にいたから、風邪でも引いちゃったのかしら」 別にフレイムは風邪を引いたのではない。サラマンダーは竜に近い種族。 竜王の圧倒的な存在感に怖じ気づいている。 「ほう、これがサラマンダーか。古い書物に載っているサラマンダーとは外見が大きく違うようだが、まあ、あれは遠く昔のことだ。長い月日が立てば、生物の姿も変わるかもしれん」 「せ、生物の姿も変わる!?」 キュルケは竜王の言ったことに対し気ったことを、恐る恐る聞いてみた。 「確か書物に描かれていたサラマンダーはトカゲではなく龍の姿であった」 「タツ?タツとはいったい・・・」 「龍というのはだな、角は鹿、頭はワニ、体は大蛇、爪は鷹、掌は虎にており、魔力により空を飛べる生物のことだ。空を飛べる竜、すなわち飛竜と言われることもある。わしの住む世界ではすでに死滅しておるが、この世界にはまだ残っておるのか」 「じゃあ、この子のご先祖様も空を自由に飛び回ってたんだ・・・」 多分それはないと思う。 「それで、あなたのお名前を押し言えてほしいんだけど・・・」 「わしの名か、わしは竜王。王の中の王、竜王だ」 「とても偉大な名前ですね・・・」 キュルケの顔は先ほどにも増して引きつっていた。 「じゃあ私はこれで」 サラマンダーを自慢しに来たキュルケだが、なんだか焦りながら去っていったように見える。実はキュルケもルイズも、リューオーという名前が竜王を表すのだとはうすうす気づいていた。 しかし、認めたくなかった。どちらも誰もが認めるゼロのメイジのルイズに、そんな高等な生物を召喚できるわけがない。 そして、ルイズの方は「自分より使い魔の方が偉いなんてあり得ない」といった感情も持ち合わせていた。さすがにキュルケはそんな使い魔を召喚してしまうルイズをゼロとは呼べなかった。 「サラマンダーが昔は空を飛んでたって本当?」 「実物を見た訳ではないのだが、本にはそう記してあった」 「そっか、じゃあ、これから食事を取りに行きましょ」 「うむ、分かった」 食堂についたルイズと竜王は、料理の並べられた椅子に座った。 「あんたもメイジでよく分かんないけど王様みたいだから、一応きちんとしたものを食べさせてあげるわ」 「ふん、小娘が、生意気な口を聞きおって」 このようなことを言うルイズだが、本当は安物の固いパンなどを与えてしまうと恐ろしい魔法で処刑されることが目に見えていた。 そして、竜王は元いた世界では悪の化身として邪険にされていて、少なくとも人間から食事をもらうなどあり得なかった。 生意気だと思いつつも、その行為に少しだけだが揺れ動いた。 「ほう、これはかなりの美味だ。料理人の腕が食材のよさを活かしておる」 「そ、それはよかったわね」 食事が終われば次は学院での魔法の授業だ。これは竜王にとってかなりの好都合。この世界を我が物にするのは授業を通してこの世界のことを知るのが一番だからだ。
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俺の名前は平賀才人。ルイズの『二人目』の使い魔だ。 元々俺は地球の日本にいたのだが何の因果かハルケギニアっていう場所に呼び出されちまった。 召喚されたときはそりゃ泣いたりしたが『住めば都』っていう言葉通り結構環境が良かった。 ご主人様であるルイズは以前までは結構厳しい性格だったらしいが。 『最初に召喚した使い魔』のおかげでその性格を改善したらしい。恩に着るよ。 俺がルイズに怒ったことは、初めてルイズの部屋に入った時にドアを開けたら本の山が俺に襲いかかってきたことだ。 そのとき俺は本の中に埋まって危うく死にかけるところだった。 部屋の中も凄まじく、ところせましに本の塔が建てられていた。 俺はルイズに少しは片づけたらどうだって言ったらルイズは返事をしただけで以来ちっとも片づけようともしない。 しょうがなく使い魔として掃除しようとしたら乗馬用の鞭で叩かれちまった。痛かったぜ…。 そんなあくる日のこと、ルイズのいない部屋でのんびりしていたらふとある物が目に入った。 それは『帽子』だった。よく魔法使いが被る黒い帽子、それがベッドの横に置いてある。 俺は何故かそれが気になったので帽子を手に取ってみると帽子の下に日記が置いてあった。 タイトルが書かれてあったがこの国の言葉はまだわからなかったら何なのかさっぱりだった。 俺は気になったのでページを開いてみると…そこには懐かしい日本語が書かれていた。 俺はプライバシーに関わりそうな事を理解して、日記を読む事にした。 ○月○日 (これは私が元いた世界の日にちだが) 私を召喚したルイズって奴から日記を借りた。 こんなに珍しい事は無い、珍しい事があったら日記に書き取っておこう。 しかしルイズから聞いた話だけだがこの世界には珍しい物がたくさんありそうでワクワクするぜ。 ▽月⊿日 今日ルイズやキュルケ達と一緒に『土くれ』のフーケとか言う奴を退治しにいった。 そいつはでかいゴーレムを作って襲いかかって来たが私の『マスタースパーク』であっという間に倒してやったぜ。 その後にノコノコと出てきたフーケの正体はなんと学院長の秘書だった。あの時は驚いたぜ。 『破壊の杖』は手に入れたかったが学院長が断固として断ったため代わりに『遠見の鏡』をもらった。 ★月★日 アルビオンから久方ぶりに帰ってきた。 まさかあのワルドって野郎が敵だったとは知らなかった。まぁすぐに倒してやったけど。 後帰るついでにアルビオンの宝物庫からいろいろと拝借してきたぜ。 でもそのせいでお姫様の愛人をむざむざ見殺しにしてしまった。 あの時気づいていれば助けられたのに…本当に情けないぜ。 ☆月☆日 やっと元の世界に帰れる方法を見つけた。 ルイズはそれを聞いて帰らせまいと私にしがみついたが仕方なく自作の眠り粉をかがせた。 この日記は置いておこう、短い間だったがルイズは私のことを本当の親子か何かのように慕ってくれた。 だから私がここにいたことをここに残しておくぜ。後、名残惜しいが良く喋る剣も残しておこう。 本当ならすぐにでも帰りたいがなんかこの国にレコン・キスタとかいう連中が近づいているらしい。 どうせ最後だ、この霧雨魔理沙がハルケギニアにいたことを記録に刻んでやるぜ。 追伸、恐らく次に召喚される奴。人間で日本語が分かる奴に伝えておく。 私の代わりにルイズの世話を見てくれ。 『タルブ会戦』の折、箒に跨りたった一人でレコンキスタの旗艦『レキンシントン』号を沈めたうえに竜騎兵を全滅させたメイジがいた。 その者の名は……キリサメマリサ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔、霧雨魔理沙。
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前ページ次ページつかわれるもの 第01話 呼び出されたもの ここトリステイン魔法学院では、現在二年生の「春の使い魔召喚の儀式」の真っ最中だ。 午後から始まったこの儀式だが、生徒達は順調に召喚に成功して行き、一人の女生徒を残すのみ。 しかしその女生徒が召喚の魔法を唱えても……聞こえてくるのは儀式を終えた生徒や使い魔の叫び声と―――爆発音だけであった。 その女生徒――ルイズはこれで16度目となる爆発にも決して諦めようともせず、ゆっくりと深呼吸を行って精神を集中させていた。 (今度こそ大丈夫だ、落ち着こう……) 周りから聞こえて来る罵声と悲鳴、教師がまた明日行えば……と言ってくるが、ルイズはもう一度だけやらせて下さい!と半ば強引に押し切った。 (今まで沢山練習したんだ、落ち着いてやれば成功するわよッ……) そして再び杖を掲げ、声を張り上げた。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 ――再び巻き起こる轟音を伴った大爆発、今までで最大の規模だ。 太った一人の生徒が巻き込まれ、焼き過ぎて焦げてしまった豚のように真っ黒になってしまった。 ルイズはついに地面に崩れ落ちた。 今までの努力は、勉強は、練習は、無駄だったのだろうか。 所詮「ゼロ」のルイズには召喚なんか無理だったのだろうか。 そう考えると涙が出そうになった……が、周りの叫び声で我に返った。 「お、おい!何か動いてるぞ!」 「あのルイズが成功したのか!?」 「マリコルヌ!傷は深いぞ!しっかりしろ!!!」 何かが、居る? 勢い良く顔を上げ、土煙の中を確認すべく目を凝らす。 そこには確かに何か動くものが存在し、ルイズは期待に胸を膨らませた。 (ドラゴン?グリフォン?この際だったら鷲とか、梟とか、何でも良いわ!) そして段々と土煙が晴れて行き、そこに居たのは…… 「あ、亜人!?」 獣の耳と尾を持つ女性と、鷲の翼のような耳を持つ女性の二人だった。 カルラが目を開いた時、目の前は土煙で覆われていた。 そして辺りからは罵声や悲鳴、そして驚愕の声が聞こえて来る。 落ち着いて周囲を見回すと、隣にトウカが倒れているのが見えた。 「トウカー、死んでませんわよねー?」 ゆっさゆっさとトウカの身体を揺する。 呼吸はしているようだから死んではいないだろう。 片手で顔を抑えながら、トウカはゆっくりと上体を起こした。 「んー……ここは?」 「良く判りませんけど、生きてはいるみたいですわねー」 「先程居た戦場では無いみたいだな……」 「どうやら"あの鏡"で何処かに飛ばされた、と考えるのが妥当ですわね……」 結論から言えば、カルラの読みは正しかった。 土煙が晴れて目にしたのは、珍妙な衣装に身を包んだ子供達であった。 それを見守っていた教師――二つ名「炎蛇」のコルベールは、目の前で起こった事態に困り果てていた。 何しろ亜人が召喚された、というだけで相当の異常事態であると言うのに、あまつさえそれが二人も居るのだ。困るのも当然と言えば当然なのだが。 試しに彼女達に『ディテクト・マジック』を使ってみたのが、結果として両方から魔力反応があった。 やはり先住魔法が使える、と考えるべきなのだろう。いきなり暴れ出そうものなら手が付けられない事は明白だ。 そして、コルベールを悩ませる理由は彼女達の存在だけでは無かった。 「ミスタ・コルベール……私はどうすれば良いのでしょうか……」 そう、彼女達を召喚したのが――ルイズだと言う事だ。 コルベール自身、彼女の努力は良く判っているつもりでいた。 そしてルイズに才能が無いのでは無く、まだ開花していないだけだ、と考えていた。 ルイズが今日の儀式の為に、毎日毎日努力をしていた事を知っていた。 だからこそ、この機会に召喚できずに退学、という事態だけは絶対に避けて欲しかった。 もしこれを認めなかったら、次に召喚する時に成功する保証は……無い。 コルベールは考える。 召喚される使い魔は、主にとって最も必要とされる存在だ。 恐らく何らかの理由で、彼女達は呼ばれたのだろう。 今更何をした所で、杖はもう振られたのだ。ならばこの流れに全てを任せよう。 もしこの女性達が暴れ出そうものなら、自身が全力で止めてみせる。生徒達を守ってみせる。 コルベールは意を決して、ルイズに声を掛けた。 「前例には無いが……例外は認めらない。春の使い魔召喚の儀式はあらゆるルールに優先する」 「彼女達のどちらか片方と、『コントラクト・サーヴァント』を」 前ページ次ページつかわれるもの
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陰陽師 攻撃術 式神召喚・参 目録 召喚術・伍 必要気合 1120 必要アイテム 呪符 ウェイト 2 効果時間 式神が倒れるまで 発動準備 なし 使用場所 戦闘専用 効果 ランク3の式神を召喚し、ともに戦わせる。 特徴 憑依攻撃(敵単体に若干ダメージと確実に呪い。ウェイト?) 憑依回復(召喚者を回復。ウェイト?) 憑依付与(召喚者にランダムで付与。ウェイト?)が使える 敵の攻撃の対象になる その他情報 名前 コメント
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陰陽師 攻撃術 式神召喚・弐 目録 召喚術・参 必要気合 840 必要アイテム 呪符 ウェイト 2 効果時間 式神が倒れるまで 発動準備 なし 使用場所 戦闘専用 効果 ランク2の式神を召喚し、ともに戦わせる。 特徴 憑依攻撃(敵単体に若干ダメージと確実に呪い。ウェイト?) 憑依回復(召喚者を回復。ウェイト?)が使える 敵の攻撃の対象になる その他情報 名前 コメント
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我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ! もうもうと立ち込める砂塵があたりを覆わなくなったころ、爆心地には奇妙なものがあった。 「・・・なによこれ」 サモン・サーヴァントがようやく成功し、歓喜に満ち溢れていたルイズは自分が召喚した それ を見て表情を曇らせた。 「ミスタ・コルベール!やり直しをさせて下さい!!」 「だめです。儀式は神聖なものです」 「でっ、でも! あれ どうみても生き物じゃありません!」 「早くコントラクト・サーヴァントを行いなさい。そうでなければ進級できませんよ」 「そんな・・・」 我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン この者に祝福を与え、我の使い魔となせ ルイズは召喚した それ に対して契約を行った。 それ は人よりもはるかに大きく、四角く、白かった。 それ は人ではなかった。触れてみるとひんやりとしていた。 それ は人を多く収容できるほどの空洞と屋根を持っていた。 「本当になんなのよ これ ・・・ あら、なにかしらこれ」 ルイズは それ の近くに一枚の紙が落ちていることに気がついた。 その紙にはこう書かれていた。 「やっぱりイナバ百人乗っても大丈夫!」 株式会社稲葉製作所より「イナバ物置」を召喚
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「わあ…綺麗ですね、キラキラしてる」 シエスタがラグドリアン湖を見下ろして呟いた。 丘の上から見たラグドリアン湖は、陽光を反射し、ガラス粉をまいたようにきらりきらりと輝いている。 以前シルフィードの背から見た時よりも、ずっと綺麗な気がした。 シエスタ達は竜車を使ってラグドリアン湖にまでやってきた。 竜の力は凄まじい物で、今までシエスタが操った馬とは比べものにならないパワーとスピードを出して、籠を引いていた。 それなのに、道中は音も振動もあまり気にならない、よほど質の高い籠なのだろう。 モンモランシーとシエスタは、つくづくラ・ヴァリエール家の力を思い知らされた気分だった。 水辺に近づくと、竜車はゆっくりと動きを止めた。 少し間をおいて御者が扉をノックし、静かに車の扉を開かれた。 カリーヌが「行きましょう」と呟いて馬車を降り、モンモランシーが降り、シエスタが最後に降りた。 ちらりと御者の顔を覗くと、なるほどゴーレムというのも納得がいく、近くでみるとその顔は「肌色」ではなく「陶器に塗りつけたような肌色」をしているのだ。 ゴーレムはシエスタが降りたのを確認すると、扉を閉めて御者の席に戻る。 シエスタは「へー」と呟いて一人感心していた。 「間近で見ると、本当に綺麗な湖ですね……青く、深く澄んでいる湖なんて、見るのは初めてです」 シエスタが湖面に手を当てて、水を手ですくい取る。 手に絡みつく水の感触は、何か神秘的な力が籠もっているように思えた。 「この湖に来るのは何年ぶりかしら、園遊会以来だから…三年前…ですわね」 カリーヌは湖面を見つめ、懐かしそうに目を細める。 三年前、ラグドリアン湖で園遊会が開かれた、それは太后マリアンヌの誕生日を祝うためのもので、各国の重鎮、高名な貴族達が招かれた盛大なものだった。 噂では、女王アンリエッタとウェールズ皇太子が出会ったのも、その園遊会だったと囁かれている。 あの時、ルイズが何をしていたのか、カリーヌはよく覚えていた。 園遊会の夜アンリエッタに呼ばれ、遊び相手を務めていたルイズ。 実際にはアンリエッタが羽を伸ばすため、影武者として呼ばれていたのだと何となく気づいていた。 魔法が使えないと言われていたルイズが、唯一心を開いていた遊び相手、それが当時のアンリエッタだった。 以前、太后マリアンヌはカリーヌ・デジレに、個人的に礼を言われたことがある。 ルイズは、王女として生まれ、「お飾り」と「カリスマ」の板挟みにあっていたアンリエッタの心の支えになってくれたと。 あの園遊会の日、何年ぶりかで再開したルイズとアンリエッタの、子供の頃と変わらぬ微笑みが思い浮かぶ。 カリーヌは過去に思いを馳せ、静かに湖面を見つめていた。 無言で湖面を見つめているカリーヌの隣で、モンモランシーもまた、じっと湖面を見つめていた。 だが、なにか気になることがあるのか、首をひねって「うーん…」と小さく唸る。 「どうしたんですか?」 シエスタが訪ねると、モンモランシーは湖面を見つめたまま答える。 「ヘンね…。 ラグドリアン湖の水位があがってるわ。岸辺はもっと、ずっと向こうだったはずよ」 「ほんとですか?」 「ええ。ほら見て。あそこに屋根が出てる。村が飲まれてしまったみたいね」 モンモランシーが指差す先には、藁葺きの屋根が見えた。 シエスタが湖の中をまじまじと見つめる、すると澄んだ水面の下に家らしき建物が沈んでいることに気づいた。 モンモランシーは波打ち際に近づき、指先で水面に触れた。 目を閉じてしばらくしすると、不意に立ち上がり、困ったように首をかしげた。 「あの噂通りよ、水の精霊はずいぶん怒っているみたい」 「今のは?」 シエスタが問うと、モンモランシーは右手の人差し指をピンと立ててシエスタに見せつけた。 「わたしは『水』の使い手。香水のモンモランシーよ。前にも言ったとおり、古い盟約で結ばれているトリステイン王家と水の精霊……その交渉役をモンモランシ家が代々努めてたの。水に触れれば感情が流れ込んでくるわ」 「へえー…」 シエスタが身をかがめて、水面に手を触れる。 「あ、波紋は止めておいた方がいいわ、水の精霊にどんな影響があるかわからないもの」 「あっ。そうですね。すみません…」 シエスタが慌てて手を引っ込めて謝る、モンモランシーはシエスタの仕草にくすりと笑って、再度湖面を見つめた。 不意に、湖面を見つめていたカリーヌが後ろを振り向く。 木の陰から三人を見つめている者が、カリーヌの視線に射竦められびくりと体を震わせた。 だが、カリーヌも殺気を感じたわけではないので、興味なさそうに湖面へと視線を戻した。 それに安堵したのか、木の陰にいた初老の農夫は、意を決して三人に声をかけた。 「もし、貴族のご婦人様方でございますか」 シエスタとモンモランシーが振り向くと、初老の農夫は、困ったような顔で一行を見つめていた。 「そうだけど…何かしら?」 モンモランシーが尋ねると、農夫は地面に膝を突いて、手に持った帽子を足下に置いた。 「水の精霊との交渉に参られたかたがたで? でしたら、はやいとこ、この水をなんとかして欲しいもんで…」 一行が顔を見合わせる。 困ったような口ぶりからすると、この農夫は湖に沈んでしまった村の住人だと想像できる。 「わたしたちは、その……」 この大変な時期に、秘薬の元となる、水の精霊の涙を取りに来たとは言いづらい。 モンモランシーが口ごもりそうになったところで、カリーヌがすっと前に出た。 「残念ながら王宮からの命を受けた者ではありません。水の精霊を怒らせた者がいると聞きましたが、知っていることを離して頂けますか」 カリーヌの言葉は丁寧さの中にも、威圧感を感じる。 農夫はカクカクと首を縦に振り、ラグドリアン湖で起こったことを話した。 農夫の話では、ラグドリアン湖の増水が始まったのは二年前だという。 船着き場が沈んでから、湖面に近かった寺院、畑、住居が沈むのはすぐだったと言う。 「領主はこのことを知ってるの?」 モンモランシーが聞くと、涙ながらに農夫が答える。 「領主さまも女王さまも、今はアルビオンとの戦争にかかりっきりでごぜえます。こんな辺境の村など相手にもしてくれませんわい。畑を取られたわしらが、どんなに苦しいのか想像もつかんのでしょうな……」 よよよと農夫が泣き崩れたが、涙を流しているようには見えない。 どちらかというと愚痴をこぼすようなしゃべり方で、今度は水の精霊への恨み言を言い始めた。 「水の精霊が人間に悪さをしてるんですわ。湖の底に沈んでおればいいものを……。どうして今になって陸に興味を示すのか聞いてみたいもんでさ!水辺からこっちは人間さまの土地だって…の…に………」 農夫の声が切れ切れになる。 シエスタとモンモランシーは、頭に?を浮かべた。 農夫の顔から血の気が引いていき、手がプルプルと震え出す。 「言いたいことはそれだけですか」 カリーヌが静かに呟いた。 カリーヌの刺すような視線に射竦められた農夫は、「へへぇ」と平伏すると、まるで逃げるように立ち去っていった。 モンモランシーは、改めてカリーヌの恐ろしさを知った気がした。 懇願ならともかく、愚痴を聞かされて気分の良い物ではないが、愚痴を言っただけでカリーヌの鋭い視線に晒されると思うと、冷や汗が吹き出そうになる。 シエスタはカリーヌを怖いと思わなかったが、とっつきにくそうな人だなと、改めて感じた。 モンモランシーが気を取り直し、腰にさげた袋からなにかを取り出した。 「…カエル、ですか?」 手のひらをのぞき込んだシエスタが呟く。 シエスタの見たとおり、モンモランシーの左手に乗っているのは一匹の小さなカエル。 鮮やかな黄色に、黒い斑点がいくつも散っている。 「ロビンって言うの、私の大事な使い魔よ」 ロビンと呼ばれたカエルは、モンモランシーの手のひらの上で、まっすぐにモンモランシーを見つめていた。 モンモランシーは右手の人差し指を立てて、ロビンに命令する。 「いいこと? ロビン。あなたたちの古いおともだちと、連絡が取りたいの」 モンモランシーはポケットから針を取り出し、片手で器用に指の先を突く。 指先に赤い血の玉が膨れ上がると、その血を一滴ロビンに垂らした。 小声でルーンを唱え指先の傷を治すと、残った血をぺろっと舐めて、再びカエルに顔を近づけた。 「私の臭いを覚えていれば、これで解ると思うわ。ロビン、偉い精霊、旧き水の精霊を見つけて、盟約の持ち主の一人が話をしたいと告げてちょうだいね。わかった?」 ロビンはぴょこんと頷くような仕草をすると、ぴょんと大きく飛び跳ねて、水の中へと消えていった。 モンモランシーがシエスタとカリーヌの方に向き直り、口を開く。 「今、ロビンが水の精霊を呼びに行ったわ。見つかったら、連れてきてくれるでしょう」 シエスタがモンモランシーの隣に立ち、湖面を見つめる。 「この中に水の精霊がいるんですよね…どんな姿をしてるのか、ちょっとドキドキしますね」 「水の精霊は人間よりもずっと、ずーっと長く生きている存在よ。六千年前に始祖ブリミルがハルケギニアに光臨した際には、すでに存在していたというわ。その体は、まるで水のように自在にかたちを変えて、陽光を受けるとキラキラと七色に輝き…」 と、そこまで口にした瞬間、30メイルほど離れた水面がぼんやりと光り輝き始めた。 岸辺からそれを見つめていると、輝きはどんどんと増していき、まばゆい光が水面から放たれる。 水面はまるで意志を持ったかのように蠢き、巨大な水滴が空に向かって落ちるような、幻想的な光景となっていった。 シエスタはあっけにとられ、口を半開きにしたままその様子を見つめていた。 盛り上がった水は、うねうねと様々な形に変わっていく、巨大な粘菌とでも呼ぶべきだろうか、陽光を取り込み七色に光るその姿は確かに綺麗だが、形そのものは怖い気もした。 湖面から顔を出したロビンが、ぴょんぴょんと跳ねてモンモランシーの元に戻る。 しゃがんで手をかざしロビンを迎え、指で頭を撫でてやると、ロビンは嬉しそうにゲコッと鳴いた。 「ありがとう。きちんと連れてきてくれたのね」 モンモランシーは立ち上がり、水の精霊に向けて両手を広げ、声をかけた。 「わたしはモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水の使い手で、旧き盟約の一員の家系。 カエルにつけた血に覚えはおありかしら。覚えていたら、わたしたちにわかるやりかたと言葉で返事をしてちょうだい」 水の固まりのような、水の精霊がぐねぐねと蠢き、人間のような形を取り始める。 その動きをじっと見ていたシエスタは、驚きのあまり目を丸くした。 水の塊は、モンモランシーにそっくりな姿を取ったのだ。 モンモランシーそっくりな水の固まりは、表情をころころと変えていく。 笑顔、怒り、泣き顔……それはまるで表情を試すような動きだった。 表情が一巡すると、水の固まりは無表情になって、体全体を奮わせて声を出した。 「覚えている。単なる者よ。覚えている。太陽よ。貴様の体を流れる液体を、貴様の体を流れる太陽の波を、我は覚えている……」 「太陽? と、とにかく、私のことは覚えていてくれたのよね?」 モンモランシーが内心の焦りを隠しきれず、ついつい強い調子で質問してしまう。 だが水の精霊は無表情のまま「覚えている。単なる者よ」と繰り返しただけだった。 「……コホン。…水の精霊よ、お願いがあるの。あつかましいとは思うけど、あなたの一部をわけて欲しいの」 水の精霊は、表情を変えずに声を出した。 「断る、単なる者よ」 「そんな!」 モンモランシーが思わず声を上げた、心なしかカリーヌの眉がぴくりと動いた気もする。 シエスタはモンモランシーの隣に並んで、胸の前で両手を合わせて握りしめ、水の精霊に向かって叫んだ。 「お願いです… ある人を助けるために必要なんです!」 「ちょっ…!やめなさいよ! 怒らせたらまずいわよ!」 モンモランシーはシエスタを後ろに下がらせようとしたが、シエスタはひるまず真っ直ぐに水の精霊を見つめている。 「お願いします!何でも言うことを聞きます。だから『水の精霊の涙』をわけて頂けませんか? どうか、どうかお願いします……」 モンモランシーの姿をした水の精霊は、なにも返事をしなかった。 シエスタは膝をつくと、地面に頭をこすりつけるほど下げて、まるで土下座のような格好で水の精霊に言った。 「お願いです…! 私は恩人に報いたいんです! ルイズ様にとって大切な人は、私にとっても大事な人なんです…、『水の精霊の涙』がどうしても必要なんです! だから…」 シエスタの必死の懇願を見て、モンモランシーはシエスタを制止しようとしていた手を止めた。 シエスタにとって、ルイズはそんなに大事な人だったのか? モンモランシーにも、ルイズをバカにしている気持ちはあった、だがフーケを追って死んだ級友は、ある意味で誇り高いとも言える。 だが、ルイズを茶化す気持ちは、ゼロのルイズをバカにする気持ちは、心の何処かに残っていた。 シエスタは、ルイズを恩人だと言っていたが、これ程までにルイズに心酔しているとは思わなかった。 カトレアを治すために土下座までするとは思っても居なかった。 もしかしたら、ラ・ヴァリエールからの援助を受けるため、オールド・オスマンが指示した行動かも知れない。 シエスタの行動は芝居かも知れない…… けれども、今この場で、水の精霊を恐れず懇願するシエスタの姿に、少なからず衝撃を受けた。 モンモランシーは水の精霊に向き直り、自分からももう一度頼んでみようと意を決した。 だが水の精霊は、突然ふるふると震えだし、姿かたちを何度も変えた。 うねうねと形を変え、モンモランシーの姿から、見たこともない女性の姿に変わった。 それはとても美しく、凛々しい女性の姿であったが、シエスタにとっては何処か懐かしい女性のような気がしてならなかった。 「よかろう……しかし、条件がある。世の理を知らぬ単なる者よ。何でもすると申したな?」 「はい、いいました」 いつの間にか顔を上げていたシエスタが、水の精霊を見上げて返事をする。 「ならば条件を出そう。我に仇なす貴様らの同胞を退治してみせよ。」 シエスタとモンモランシーは顔を見合わせ、呟いた。 「「退治?」」 「さよう。我は今、水を増やすことで精一杯で、襲撃者の対処にまで手が回らぬ…。そのもの共を退治すれば、望みどおり我の一部を渡そう」 要は、水の精霊を相手にするようなメイジと戦って、勝てと言っているのだ。 モンモランシーの額に冷や汗が浮かんだ。 「…………やるしかない、わよね」 「そうです、ね」 二人は顔を見合わせて、苦笑した。 水の精霊が住む場所は、はるか湖底の奥深くだと言われている。 襲撃者は夜になるとやって来て、魔法を使い水の中に侵入、水の精霊を襲撃する。 水の精霊によれば、襲撃者が来るのはガリア側の岸辺だという。 シエスタとモンモランシーの二人はガリア側の岸辺に隠れて、襲撃者を待つはずだった。 だが二人は、トリステイン側の岸辺に停められた竜車の中で、寂しく夕食を取っていた。 カリーヌは客人を危険な目に遭わせられないと言って、単独でガリア側の岸辺に向かったのだ。 どこからか調達したバスケット一杯のサンドイッチを渡されたが、食欲が湧かないのか中身はほとんど減っていない。 この竜車は、緊急時の外泊を考えられており、椅子を引き出すとシエスタとモンモランシーが寝るには十分な広さのベッドになる。 貴族の馬車という寄り、軍人の馬車と言うべき設備だった。 「…大丈夫なんでしょうか」 「あんなに強く『一人で行きます』なんて言われたら断れないわよ」 シエスタは、一人でガリア側の岸部に向かったカリーヌを案じて、車の窓から外を見渡した。 ルイズが魔法で爆発を起こし、土くれのフーケごと木っ端微塵に吹き飛んだと言われているあの日も、こんな夜だったかもしれない… シエスタの胸に、ルイズへの憧れと、石仮面への恐れが去来した。 カリーヌ・デジレは、持参した軍服に着替え、木の上に座り瞑想していた。 マンティコア隊の服ではなく、それよりもっと昔、まだ魔法衛士隊に入隊する前の服だった。 ルイズと同じぐらいの年代、16の頃だっただろうか、その頃から魔法衛士への憧れがあった。 カリーヌは静かに過去を思い出し、静かに微笑んだ。 それから一時間ほど経った頃だろうか、岸辺に近づく人の気配に気づき、薄目を空けてそれを視認した。 人数は二人、漆黒のローブを身にまとい深くフードをかぶっている。 男か女かもわからないが、その二人は水辺に立つと杖を抜きルーンを唱えていたので、襲撃者には間違いなさそうだった。 カリーヌは小声でレビテーションを唱え、ゆっくり着地する。 ローブを身に纏った二人組は、硬直したように動きを止めた。 「!」 襲撃者の一人が杖を掲げる、と同時に空中に作られた炎がカリーヌを襲う。 同時に、もう一人の襲撃者が距離を取りつつルーンを詠唱し、地面に『エア・ハンマー』が打ち込まれた。 土が跳ね上がり、カリーヌの視界が塞がれる。 無数の炎の玉が作り出され、雨のようにカリーヌの頭上を覆う。 氷の刃が竜巻のようにカリーヌを包み、その肉を引きちぎり骨を砕く。 ……はずだった。 ギュン!と音がして周囲の空気が圧縮され、土煙と氷と炎は一つの固まりとなった。 無数の魔法に晒されたはずのカリーヌはまったくの無傷であり、土埃の汚れ一つとして無い。 カリーヌは直立不動のまま、右手に持った杖に力を込め、ルーンを詠唱する。 ただ「風を起こせ」という意味のルーンであり、風系統ではもっとも初歩のもの。 それはまるで、鉄砲水のような粘りを持った風となり、遠く上空で待機していた風竜を巻き込んで、襲撃者二人の体を巻き上げた。 空中で竜巻に飲まれた二人の手から、杖が離れる。 150サントはありそうな大きな杖と、20サント程度の小さな杖が風に乗ってカリーヌの手元に届けられた。 カリーヌは、腰から下げたロープを空中に放り投げると、風に乗せて宙に舞わせた。 ロープは風に乗って襲撃者の両手両足に絡みつき、その動きを封じる。 そして襲撃者の二人はゆっくりと地面に降ろされ、風竜は目を回して地面に倒れ込んだ。 『烈風』の異名を持つ彼女は、感情の読めぬ冷たい瞳で、襲撃者を見下ろしていた… To Be Continued→ 戻る 目次へ
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ゼロの悪魔召喚師 第六話 <ルイズ> 「に、逃げたわねっ!!あの馬鹿使い魔!!」 朝起きたらあの使い魔がいなかった。 あれだけ従順だったのは、この時の為か! こうしてはいられない、すぐに探し出して捕まえなければ。 このままだと、キュルケに何を言われるか…いや、それどころか学院を退学させられるかも… マズイ、実にマズイ… 実家に帰ったときにどうなるか……母と姉の顔が思い浮かぶ…… 「必ず捕まえる!命が危ない!」 こぶしを振り上げて決意を掲げる…ってこんなことしてる場合じゃない。 私はネグリジェをベットへ脱ぎ捨てると、テーブルの上にあった制服にこれ以上ないという速さで着替えていく。 アイツはこの場所に来て二日目…どこへ行こうというのかしら? 「流星は甘わね…町の場所もわからないのにこの私から逃げられるわけがない!!」 その時枕元に置いておいた乗馬鞭が目に入る。 「うふふふ~~折檻タイムよ!流星、必ず捕まえるからね~~。」 笑いがこみ上げてくる。 それにしてもどこに行ったのかしら?普通なら町だろうけど…? ……しまったぁ!!アイツ土地勘がないからどこに行ったのか予測もできない。 聞いて回るしかないの!?やっぱ捜査は足なの!?でも、急げば誰にも知られないで済むかもしれない。 あ~~~!!なんでこんなことになってんのよっ!! 「おはようございます。ご主人様」 ドアが開いて流星が顔を出した、あろうことかキュルケと一緒に。 「えっ?な、なんで?」 わけがわからない、頭に浮かんだ言葉をそのまま声に出す。 「私は朝の散歩の帰りです。キュルケ様とは部屋の前で一緒になりました。」 流星が相変わらず笑顔で答えてくる。 「おはよう、ミス・ヴァリエール。あなたも貴族なんだから、朝から騒ぐのはよした方がいいわよ。」 キュルケまで笑いながら声をかけてくる。 「こ、これには深い理由があるのよっ!」 恥ずかしさで自分でも顔に血が上ってくるのがわかる。 「どういう理由なのかしら?もしかして使い魔に逃げられたと思ったとか?うふふふふ」 「そ、そんなわけないじゃない。いやあねぇ、下世話で。おほほほほ」 キュルケと乾いた声で笑いあう…やっぱコイツは敵だ。 「仲よきことは美しきかなと、そろそろ朝食の時間なのでは?」 この馬鹿は目が腐ってるわね。 「そうね、流星、ついてきなさい。食堂に行くわ。ミス・ツェルプストー鍵をかけるから出て行ってくださる?」 「わかったわよ、あと部屋は片付けたほうがいいわよ。脱ぎ散らかしててだらしないわ。」 「流星!!」 怒鳴り声を上げながら振り返ると傍でネグリジェなどを手早く畳んでいた。 片付けさせようとして呼びつけたのに… 「さて行きましょうかご主人様」 「え、ええ。そうね」 命令する前に仕事は終わらすし、物を取り上げても怒らないし、常に命令には従順なのにイラつくのはどういうことかしらね…… 流星に部屋の鍵をかけさせていると 「そぉいえば、私も昨日使い魔を召喚したのよ。おいで、フレイム~」 キュルケが自慢げに呼び出した使い魔を見せつけた。 「ふ、ふ~ん。サラマンダーね、よかったわね」 「これがサラマンダー?少し触ってもいいでしょうか?キュルケ様」 コ、コイツ私が不機嫌なことはどうでもいいのかっ!ってかキュルケに様付けっ!? 「ん~、別にかまわないわよ」 「では、失礼して」 流星はそういうと丹念にサラマンダーを調べ始めた。 キュルケと一緒になってそんな流星を見ながらなんとなく 「サラマンダーを見るのがはじめて?」 「いえいえ、ノモスと大分違うので…」 そういえばノモスってどんなところなのだろう? マジックアイテムとかの勉強に留学してたらしいけど。 フレイムの足の裏や口の中を覗き込んでいる流星に質問をつづける。 「どんな風に違うの?」 「そうですね、まず浮いてます。それから魔法を使います。」 「「えっ!?」」 驚きの声を上げてキュルケと顔を見合わせる。 「さすがに炎を吐くことは無いですけどね」 サラマンダーは普通火を吐いて、魔法は使えないものでしょ!? 「ちょ、何よそれ?」 思わず聞き返す。 「からかわれてるんでしょ。ホントだとしたらアナタは火トカゲに劣ってることになるわよ。馬鹿な事言ってないで、早く行かないとご飯食べ損ねるわよ。」 キュルケがため息をつきながら急かしてくる。 「りゅうせ~~~い」 「本当なんですけどねぇ。信じられませんか?」 「信じられるわけ無いでしょ!!早く食堂に行くわよ!!」 まったく、コイツは…… それでアルヴィーズの食堂に着いたわけなのだけど… 「どうしました?お座りにならないので?」 「す、座るわよ」 平民の見たことのないぐらいの豪華絢爛なこの食堂で平然としてるのだ! テーブルの上には立派な食事が並んでいるのに! すこしは驚くとか凄いですねとかコメントするとか! 何にもなくてふつーに椅子を引いて待ってるのだ…気が利いてるところがなおのこと癪に障る 「ねぇ、アンタこの食堂見て何か言う事ないの?」 「え?無駄に豪華ですね」 辺りを見回して答えてくる。 「アンタね…、日本だっけ?アンタの故郷にこういうところある?」 「一応似たようなものとして純金の茶室ってありますよ。壁も部屋も道具も全部純金で作られてますけど…それがどうかしましたか?」 不思議そうな顔でこっちみんなっ! 「じゃあ、料理はっ?」 「これではカロリー過多、栄養の偏り、ご主人様は成長期なのでもっと野菜を取ったほうがよいと思います。ついでに言えば朝からアルコールの摂取は体の成長の邪魔をするような気もします。」 そーゆーことじゃない!!そーゆーことじゃないのよーーっ!! 「ちょっと、ミス・ヴァリエール。もう食事前の祈りの時間なんだから静かにしなさいよ。」 「だってコイツがっ!」 キュルケに怒られるなんて!全部コイツが悪いっ!! 「では、私は端のほうに控えておりますので」 流星は私とキュルケに一礼すると壁際の方に向かっていった。 体よく逃げられたーーっ!! 「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よっ!今朝もささやかな糧をわれに与えたもうたことを感謝いたしますっ!」 「…アナタねぇ」 隣に座ったキュルケがため息とともにあきれた声を出してくる。 「始祖と女王に喧嘩でも売ってるの?」 「うっさいわね」 答えつつ受け皿に肉料理を盛り付け、がつがつとウップンを晴らすように食べる。というか、やけ食いをしているのだけど。 「よく胸焼けしないわね…それより何でそんなにイラついてるのよ。」 あきれた声を出してくるキュルケに答えず黙って流星を見る。 「使い魔?人を使い魔なんて聞いたこと無いけど見てる限りじゃ礼儀も知ってるし、気も利く、命令は守る。何が不満なのよ?」 キュルケはサラダをパクつきながら聞いてくる。 肉をワインで胃に押し込みながら「わかんないけどそれがムカつく」とは言えず 「床」 「床?」 キュルケが床を見て 「なにこれ?」 「皿」 「なんか貧しいものが入ってるわね?」 「使い魔の餌」 「…………」 キュルケの目が点になり無言になる。 「しつけって必要でしょ」 「…………」 「しつけって必要でしょ」 「…………」 「しつけって必要でしょ」 「…………」 「しつけって必要でしょ」 「……彼のどこに躾が必要なのよ……。イラついてるのってアナタの言う躾ができなかったから?」 思考が飛んでいたキュルケが帰ってきた。 「私がそう思うからしつけは必要なの。イラついてんかいないわ。」 「はいはい、わかったわよ。でもこれじゃ平民以下の食事よ。使い魔に倒れられたら、ゼロ以下になるわよ。」 「むぅ…」 流星にこっちに来る様に指で合図する。 「何でしょうか?」 「アンタの食事、厨房の方に行って食べなさい。そこのアナタ。こいつを厨房に連れてって食事を与えてくれる?」 そばを通りかかったメイドに流星を連れて行くように頼む。 「わかりました。こちらにどうぞ。」 流星はメイドに連れられて厨房の方へと消えて行った。 「それにしてもアンタずいぶんやさしいのね。流星に惚れたの?」 キュルケの方を振り向くとあきれた顔で 「異邦人っていいけど、ただの平民じゃねぇ。」 「あら、ただの平民じゃないわよ。」 昨日の夜巻き上げ…もとい上納させた魔力の篭っている石を見せる。 「石?」 怪訝そうな顔で石を覗き込む。 「マジックアイテムなんだって、あと銃も持ってるらしいわよ」 「よくマジックイアテム譲ってくれたわね。そんな人間にあんな扱いしてるわけ…」 キュルケはそう言いながらも目が石から離れない「真贋を見極めてあげるわ」とか言いながらディテクトマジックをかける。 これが偽物だったらどうしてくれよう。また馬鹿にされるんだ。でもいまさら引っ込みがつかないし。 そんな葛藤をよそに魔法をかけられた石が輝く。 「どうやら本物みたいね。」 「どう、凄いでしょ。」 胸を張ってキュルケを見やる。 「確かに凄いわね。で、銃のほうはどうなの?」 「じ、銃なんかに興味があるの?」 「当たり前でしょ、見たことの無いマジックアイテムなんだから。どんなものを持っているか好奇心を刺激するわね。」 うぅ、私銃に興味ないから見てないし…って何で私キュルケの興味を煽ってるのよ。 「あら、知らないの?」 「知らないわけ無いじゃない!ただ持ってないから説明できないし」 「本当かしらね」 目を細めながら笑顔を浮かべる。 「失礼します。流星様には厨房の方で賄い食を食べて頂いていますが、よろしいでしょうか?」 さっきのメイドが声をかけてくる。 「かまわないわ、丁度良いから流星呼んできてくれない?」 「えっ?流星様をお連れするんですか?」 「急いでね。」 「わ、わかりました。」 メイドが急いで厨房の方へ走っていく。 「これでいいわね、本人に聞けば問題ないでしょ。」 「間違ってはいないけど、間違ってるわ。」 キュルケが首を振りながらため息をついている。 ん、何を言ってるのだろう。色ボケが頭にまで回ったのだろうか? 「お呼びでしょうか?」 「ちょっと、銃の説明をしてほしいんだけど」 「銃についてですか?」 すこし固まったわね 「そうよ」 「食堂で、食事中に?」 「私は終わったもの。黙って従いなさい。」 「わかりました」 腰の後ろに手をやり、銃をテーブルの上に置く。 「ゲルマニアのものとは違うのね、トリスティンのものとも違うし」 キュルケが銃を手にとってしげしげと眺める 「銃の違いなんてわかるの?」 「ゲルマニアは技術の国でもあるのよ」 あきれた顔でこっちを見てくる。 「って何勝手に人のもの持ってるのよ!」 「別に良いではないですか。減るものではありませんし。フレイムのこともあります。これくらいで騒いでいては器量が狭いと思われますよ。」 「気が利くわねぇ。いい使い魔じゃない。」 私を差し置いて和やかに会話進めるなぁ! 「でも重いわね…」 「そうなの?」 キュルケから渡され持ってみる。 「本当に重いわね、これで撃てるの?」 「安全装置がかかっていますから今は撃てません。」 「威力はどれくらいなのかしら?」 「拳銃の中では最高峰の威力ですよ。」 「それじゃわからないわよ。鎧とか撃ち抜ける?」 「鋼鉄製で厚みがあれば撃ち抜けないでしょう」 「ちょ、ちょっとそんな威力のある銃聞いたこと無いわよっ」 キュルケが慌てている。うわ~~いい気分ね~~。 上機嫌で質問を続ける。 「どこから弾を込めるの?」 「ここです。グリップの中に弾を込めます」 「どうやって?」 流星は銃を持つと説明を始めた。 「ここがグリップ、これがマガジンボタン、これを押すか弾切れになるとマガジンが落ちます。それで次のマガジンを入れます。」 グリップからまがじん?が落ちて流星が手馴れた手つきで次のマガジンを入れる。 「それで?」 「終わりです。」 「ちょっと、そんな弾込めの仕方聞いたこと無いわよ」 キュルケが更に慌てている。 うふふふ~~勝った、キュルケに勝った。生きてて良かった~~~。 こんなにうれしいことは無いわ。コイツ召喚して本当に良かった。 「どうやって撃つの?」 「ここが安全装置、これを外してフロントサイト、リアサイトこれで狙いをつけ引き金を引く。これで撃てます。」 「私もその銃撃ってみたいんだけど?」 「銃の反動で的に当たらないと思います。その上強力な反動でご主人様の体格だと肩か手首の骨が外れるかもしれません。」 「なによそれ!?あんたは撃てるわけ?」 そんな銃使えないじゃない。 「ええ、もちろん。この銃デザートイーグルは威力の分扱いにくいんですよ。」 「私に撃てる銃はないの?」 「無いことも無いですが…」 笑顔で右手を出す。流星が持っている銃よりすこし小さい銃を手の上に乗せる。 「それで?」 「名前はベレッタ92F、装弾数は15発。使い方は安全装置がこっちに移動してるだけです。」 今度は左手を出す。 ため息とともにまがじんを2つ手の上に乗せる。 笑顔で鞄にべれったとまがじんをしまう。 「流星、教室に行くわよ。」 「ま、待ちなさい!あなた教室に持って行くの?それ!!」 キュルケがこれ以上無いくらいに慌てている。 「部屋に戻るの面倒でしょ?じゃあ、私は先に行くわね~」 キュルケに告げると流星に鞄を持たせ教室に向かう、今までに無く足どりが軽いわね。 「ま、待ちなさいって!」 キュルケが叫んでいるけど気にしない~~~。
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『風子、参上!』 トリステイン魔法学院恒例、二年生への進級試験を兼ねた使い魔召喚。それは神聖なる サモン・サーヴァントの儀式。 ハルケギニアのメイジなら必ず行い、運命に導かれた主従となるべき生物が召喚の門を 通ってやってくる儀式だ。それは、このトリステイン王国の魔法学院でも変わりはない。 ただ変わっていたのは、この儀式で最後に召喚を行っていたのは『ゼロ』の二つ名を持つ ルイズであった事。 ルイズは延々と召喚を失敗し続けた。何度も召喚魔法を唱えたが、使い魔となるべき生 物なんか現れない。ひたすら爆発が続くばかり。 既に召喚を終えて使い魔を従えた他の学生達がヤジを飛ばすのも飽き始めた頃、土煙の 中に影があった。 『どうやらお困りのご様子。ですが、この風子が来たからにはご安心を!』 その影は、人影だった。 ルイズは、目の前に召喚された存在が理解出来ない。 召喚の儀を取り仕切っていた教師コルベールは唖然呆然としてしまう。 それは、間違いなく人間。小柄なルイズと同じくらい小柄な少女。 長くて黒っぽい髪を揺らす、小さな三角帽を被った、ミニスカートの女の子。 使い魔はメイジが従える動物。人間は召喚されない。そんな記録は存在しない。 だが、間違いなく召喚されたのは、人間だったのだ。 『困った人を見過ごす事など出来ません。この風子、お姉ちゃんの結婚式に出てくれた人 達への恩返しのため、そして世のため人のためにやって参りました!』 周囲の生徒達は言葉を失った。 人間が召喚された事自体が異例なのだ。 しかも少女の格好は奇天烈の極みだ。木彫りの星形を右手に掲げ、白玉をてっぺんに付 けた緑と赤のストライプ模様な三角帽を被り、やたら上質そうなクリーム色の上着に紺色 のストッキングを履いている。長い髪を薄紫色の大きな可愛いリボンでまとめている。 聞いた事もない言語で、なにやら高らかに宣言しているのだ。 「見ろ、平民だ!しかも異国の女の子だぞ!」 「人間を召喚するなんて、さすがルイズ?」 「にしても、かなり良い服を着ているわ。メイジじゃなさそうだけど、ただの平民という わけでもなさそうね」 周囲の生徒達は、ある者はゼロのルイズが召喚を失敗したと囃し立てる。またある者は どこの国の女の子だろうと訝しむ。そしてまたある者は、これって使い魔を召喚した事に なるの?と首を捻った。 「ミ、ミスタ・コルベール!やり直しを、召喚のやり直しを要求します!」 しかしコルベールは、生徒の視線から気の毒そうに目をそらし、小声で答えた。 「それは出来ません、召喚の儀は神聖な儀式で、やり直しは―――」 「で、でも、人間が召喚されるなんて―――」 そんな周囲の人々のやりとりに、自分の世界に入って口上を叫んでいた風子はようやく 気が付いた。キョロキョロと周りの学生達、そして彼等の傍らに控える見た事もない動物 たちに。 『な、なんと!風子は外国に来てしまっていたのですね!?これは困りました。風子は高 校入学初日に事故で入院して以来、ずっと英語の授業を受けていないのです!これでは伝 説の競技、ヒトデヒートのルールを説明する事が出来ません』 そう言って、風子は必死に抗議するルイズと困り果てるコルベールの隣にトコトコと歩 み寄ってきた。 『というわけで、帰って良いですか?』 申し訳なさそうに、風子は二人へ申し出た。日本語で。 ルイズは、そんな少女をギロリと睨み付ける。 そして――― 「こ、これは使い魔の儀式なんだからね!だから、ノーカウントだからねッ!」 ぐわしっと風子の頭を左右から捕まえる。 『な!?何をするんですか!放してく』 ちゅっ ルイズは、風子の言葉を自分の唇で遮った。 風子の大きな目は更に大きく見開かれ、体が驚きのあまり硬直する。 周囲の男子生徒は、思いもかけぬ眼福に感激の歓声を上げてしまう。 ようやく我に返った風子が、服の右袖で唇を拭きながら思いっきり後ずさった。そして 突然ハルケギニア語を話し始めた。 「な、何と言う事をするんですか!いきなりこんな事をするなんて、あなたは悪人だった のですね!?…って、え!? 痛い、イタタタ!キャアッッ!!」 瞬間、風子は左手を押さえながら悲鳴を上げる。 自分の唇をハンカチで拭いていたルイズが冷たく言葉を投げかけた。 「使い魔のルーンが刻まれてるのよ。すぐ済むから安心なさい!まったく、なんで女の子 とキスなんか…」 そんな愚痴を言っている間に、風子の左手にルーン文字が浮き上がった。 「ふむ、珍しいルーンだな…」 と言ってコルベールはルーンのスケッチを取ろうと、左手を押さえてうずくまる風子に 近寄ろうとする。が、慌てて風子は二人から思いっきり跳びはねて、二人から距離を取っ た。 ちょっと転びそうになった風子は、二人をズビシッと指さす。 「なんて人達ですか!助けに来てあげた風子をいじめるなんて、信じられません!そんな 人達には、この風子のサイン入りヒトデはあげられません! さよならです!」 言うが早いか、風子は広場からトトトーと学院正門まで走っていく。そして門から外に 駆け出してしまった。 「あ!ちょっと待ちなさい!使い魔のクセに、勝手にどこへ…」 そう言ってルイズは慌てて風子と名乗った少女を追いかけて、学院の門を出た。 だが、そこには誰もいなかった。 ルイズは右を見る。 慌てて左も見る。 目をこらして遠くを見渡す。 だが、少女の姿は全く見えなかった。 ふと上を見ると、コルベールが宙に浮いていた。『フライ』で空から少女を捜している らしい。しばらくして、コルベールは地上のルイズへ向けて、すまなそうに首を横に振っ た。 魔法も使えないはずの女の子が、ついさっき学院の門をくぐったばかりのはずなのに、 完全に消えてしまった。何の痕跡も残さず、まるで最初からいなかったかのように。 「というわけで、坂上智代さん!」 風子は、夕暮れの桜並木を歩く生徒会長の前に立っていた。 「私をいじめた悪人を、懲らしめて下さい!」 「・・・はぃ?」 智代は困惑した。 この目の前の女の子は、いきなり何を言い出すんだろう。以前から町のあちこちで何度 も遭ってるけど、誰なのかどうしても思い出せない風子と名乗るこの子は誰なんだろう、 と。 助けを求めて後ろを振り返る。そこには一ノ瀬ことみ、藤林姉妹、古河渚といった彼女 の友人達、そして自称ライバルの春原陽平に、岡崎朋也などがいた。皆それぞれに、一体 全体この風子という子は何者で、なんでいきなりこんなことを頼みに来たのかと頭を捻っ ている。 「あ~…その、ねぇ…風子さん、だっけ?」 「はい!」 ほとほと困った生徒会長の呼びかけに、元気よく当然のように風子が返事する。 「事情がよくわからないのだけど…いじめられたって、どう、いじめられたのか?」 「これです!」 風子が智代の眼前にズビシッと左手の甲を突き出す。そこには使い魔のルーンが描かれ ていた。 「こともあろうに、あの人達は私の左手に落書きをしたのです!許せません!是非あの人 達に天誅を下して下さい!」 なるほど彼女の左手には、なにやら字が書かれていた。 だからといって、なぜ智代が風子の仇を討つのだろうか。一同は混乱するばかりだ。 「確かに…我が校の生徒がいじめられたのなら、生徒会長として許しがたい事だが…一体 誰にやられたのだ?」 尋ねられた風子は、顎に手を当てて考え込む。 そして、ポンと手を打った。 「分かりません!」 全員、ズッコケた。 「よく考えたら、私は彼等の名前も聞いていませんでした!外国語で話していたので、尋 ねる事も出来ないのでした! なので、今から確認してきます!」 そう言って、風子はトテトテ~…と桜並木の向こうに消えていった。 「一体、あの子は誰なのだ…?どこかで会った気がするんだが…」 生徒会長の疑問に、その場の誰も答える事は出来なかった。 「と、言うわけで、悪人め!正々堂々名乗りなさい!」 「誰が悪人よ、ていうか、どっから現れたのよー!」 寮塔、ルイズの部屋。 使い魔に逃げられ、椅子に座ってしょげかえっていたルイズが振り返ると、そこには腰 に手を当てて仁王立ちする風子がいた。